トランスジェンダーのトイレ論争。戸籍上の性別によりトイレは使い分けるべきか?

トランスジェンダーのトイレ論争。戸籍上の性別によりトイレは使い分けるべきか?

現在セクシャルマイノリティと呼ばれるLGBTQ+のコニュニティをサポートしようと多くの企業や自治体が乗り出している。

電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2018」の調べによると、LGBT層に該当する人は8.9%。
計算するとだいたい日本人の11人に1人はセクシャルマイノリティに該当するということに。

自分の周りの家族や友人にセクシャルマイノリティの人が存在してもおかしいくないだろう。

LGBTQ+を社会で受け入れていくという流れ自体は非常にいいのだが、仕組みや制度を整えていこうとすると意外とその根は深い。

子供がほしいカップルに対して養子縁組はどうするのか?
男女に分けて実施されている教育科目はどうするのか?
就職先の環境をどう整えるのか?

列挙するとキリがないが、すべての人が生きやすい社会をつくるためには、それぞれの立場の人が一生懸命考え法律・制度・仕組みを少しづつでも変えていく必要がある。

今回の記事では、米国で継続的に繰り広げられているトランスジェンダーのトイレ論争についてご紹介いたします。

米国のトランスジェンダーのトイレ論争って何?

心の性別(ジェンダーアイデンティティ)が生まれ持った性別と一致しないトランスジェンダーは、男女というはっきりと生物学的により線を引かれている世の中において多くの壁に直面している。
その一つが公共のトイレだ。

現在アメリカでは、おもに戸籍上の性別により使用できるトイレが決定されている。
自由に自分の意思で性転換手術をして戸籍をかえる選択肢のある大人は、ある程度自己判断できるとして、問題は性転換手術ができない学生が過ごす学校だ。

性別は男性でも心は女性見た目も女性なのに男性のトイレもしくは多目的トイレしか使えないという悩みを抱えている学生は数知れない。

アメリカでは度々学生のトイレの使用について裁判所で議論がかわされてきた。

政権により振り回されるトイレ論争の歴史

2016年3月
└ノースカロライナ州の議会は若者がジェンダーアイデンティティに従ってトイレを使用することを禁じ、生まれ持った性別によって使用できるトイレを決定する法を制定した。

2016年5月
└米国の司法省と文科省は、ジェンダーアイデンティティを尊重しないことは連邦法のTitle IXを侵害すると言及した。連邦政府の補助金を受け取っている全ての学校はジェンダーアイデンティを守るべきであると。さらにに同月、性差別的な学校に対して注意勧告するようなメモを送り、オバマ政権化においてはTitle IXを侵害する限り補助金を失う可能性があることを通達した。

Title IXと性的暴行被害と合衆国連邦政府の役割、翻ってアメリカの高等教育 … Title IXというのは、”Education Amendments of 1972″で制定された、連邦政府からの補助金を受けている教育機関において、性別による差別を禁止した連邦法です。参照元:大学の片隅にて。

2016年8月
└テキサス州の裁判官リード・オコナー(Reed O’Connor)は、オバマ政権の行政の司令に従いトランスジェンダーの学生をジェンダーアイデンティティに従ってトイレを使うことを許可した。後のトランプ政権が行政はこの議題について介入しないという意を評した。

2017年2月
└トランプ政権化になり、オバマ政権時代に定められた学生がジェンダーアイデンティティによりトイレを使用させないことはTitle IXへの侵害だという解釈を取り消すように動き出した。トランプ政権の流れによりいくつかの裁判はTitle IXはトランスジェンダーの学生も守るための連邦法ではないと結論づけた。

2018年3月
└ヴァージニアのトランスジェンダーの学生ギャビン・グリム(Gavin Grimm)氏が学校側を相手取り訴訟を起こす。主張としては戸籍上の性別で使用するトイレを強制し、男性のトイレを使わせなかったとして法に違反すると連邦裁判所に訴えたのだ。

参考URL:https://www.tolerance.org/magazine/transgender-bathroom-laws-history

ギャビン・グリムの裁判はまだ続いている。
政権交代によってトランスジェンダーのトイレ論争も180度方向性がころっと変わってしまったのだから、アメリカにおいて政治の影響がどれだけ強いかおわかりいただけたと思うが、正直トイレ論争については2つの意見が対立し平行線をたどることが予測される。

トイレ論争は2つの意見に分かれる

トランスジェンダーの学生がトイレジェンダーアイデンティティにのっとって使用するか否かの議論は、今後も問題として上がってくることは間違いない。

反対派の意見

正直大多数の人間からしたら、少数派の意見や悩みなどあまり親身に考えることができない。
少数派のために法律を変える必要があるのか?
仮にトランスジェンダーのフリをした男性が女性のトイレに入ってレイプをしたら?
など大多数はの意見は主に変わることへの「不安」から反対としている。
学校に子供を通わせている親の気持ちからすると子供の身を守るために安全な環境を整えたいというのが願いのようだ。

賛成派の意見

賛成派の意見は当事者そしてLGBTQに協力的なアリーの声が多い。
そもそも、トランスジェンダーを危険人物のような扱いをしていること自体差別的なのだ。
また、ジェンダーアイデンティティに従ってトイレの選択権がないというのは苦痛はであることは間違いない。
例えば、あなたが幼少期から生物学的には男性でも女性として見た目も心も育っているトランスジェンダーだったとしよう。家族にも女性として認められ周りにも女性として認知されている。しかし学校では男子生徒と同じトイレを使わないといけない。そんな状況を考えてみてほしい。

使用できるトイレに制限のある学生はいじめられる!?

現状解決策としてトランスジェンダーの学生は多目的トイレを使えばいいという結論に至っている学校が多い。
そしてつい最近こんな調査結果が出された。

CNNによると、アメリカのトレンスジェンダー&ジェンダーノンバイナリー(心の性別が定まっていない人)のティーネイジャー(若年層)で、お手洗いやロッカールームがジェンダーアイデンティティと一致していない場合は性的ににいじめられる可能性が非常に高いという調査結果がでたという。

Journal Pediatricsで集計されたデータは、3,673人のLGBTQ対象者13歳〜17歳に対してウェブで調査を行ったもの。彼らは教師や学校から直接、ジェンダーアイデンティティとは一致しないロッカールームやお手洗いを使うよう言い渡されている学生たちは「制限あり」というラベリングをされた。

そのうち4人に1人の25.9%の学生がここ12ヶ月のうちに何かしら性的に侮辱されたことがあると回答。また「制限あり」とラベリングされた学生については、さらに高い36%の確率で性的に侮辱されたという結果が出ている。

生まれ持った性別とジェンダーアイデンティティが一致している学生が性的にいじめられる確率は女性で4%、男性で15%というデータ(Youth Risk Behavior Surveillance )があるため、比較してもやはりトランスジェンダーがジェンダーアイデンティティと一致していないトイレを使用することでいじめられる可能性は高いことがわかる。

理由としては、トランスジェンダーの学生だけが多目的トイレを使うことで「浮く」存在となってしまっていることが1点。また、ジェンダーアイデンティティを平等なものとしてみないそもそもの制度に敏感に反応する大多数の学生が意識的に「不安」を覚えいじめにはしるとされている。

日本でものちにトイレ論争は起こる?

正直日本ではまだ学生が学校側を起訴するような話は聞かない。
ただ、耐えているトランスジェンダーの学生は少なからず存在していると考えられる。

日本は公共のトイレが非常に多い国だ。
駅のなかやビルの施設でも比較的トイレにアクセスしやすい。

見た目が男性でも心が女性のトランスジェンダー(MtF)が女子トイレに入る。
逆に見た目が女性でも心が男性なトランスジェンダー(FtM)が男子トイレに入る。

違和感のある人ない人で意見が分かれるに違いない。
早めに議論する余地はあるのではないだろうか。

カイ・シャプリーとその母親の絆。自分の子供がトランスジェンダーであることを受け入れた母親の葛藤。